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トピックス
[2011.12.15] インドネシア ウダヤナ大学(バリ島)整形外科・外傷外科教室との臨床・教育・研究協力関係締結について(PDF)
 
概 要
整形外科は、運動器全般すなわち、骨、関節、筋肉、神経などすべての領域を受け持つ科です。首から手や腕、背中、腰、足の先まで(腹部を除く)痛み、腫れ、しびれなどの症状があれば整形外科に関連したものと考えていただいていいと思います。高齢化社会を迎え、ますます整形外科を受診される患者さんの数は増えており、少しでも皆様のお役に立ちたいと我々整形外科スタッフも日々研鑽努力をしております。

医師の異動にともない、2011年4月より中止にしていました「骨・軟部腫瘍診療」が、2011年10月1日より再開となりました。生物学的製剤を含めた薬物療法やリハビリに加えて、関節形成や滑膜切除術などの手術治療を行う「リウマチ外科診療」、スポーツなどによる膝外傷を専門とする「膝関節外科診療」、手の外傷や病気に対する「手の外科診療」や、首の痛みや手のしびれ、腰の痛み、足のしびれや痛みに対する治療を専門とする「脊椎外科診療」は好評をいただいています。

さらに、膝関節や股関節など体重のかかる大きな関節の軟骨が傷んでくる変形性関節症、あるいは外傷(交通外傷を含む)に伴う骨折や骨が弱くなって(骨粗鬆症)生じる骨折に対しては、スタッフ全員で治療に当たっております。上記のような症状をもって受診された場合、X線写真、CT、MRI、シンチグラムなどの最新の画像診断を手助けとして病気の原因を探り、治療を開始させていただきます。治療には、手術を主体とした外科的療法とリハビリテーション(運動療法や作業療法、温熱療法など)や投薬を主体とした保存的療法があります。適宜十分な説明をさせていただいた上で、どの治療法を選択すべきかを相談しながら、患者さんやご家族とともに最適の治療を探っていくように心掛けております。一般病院では手術施行が困難な症例の紹介も多く、例えば人工透析を行っている場合は当院の腎臓内科と、また心疾患を有する場合は循環器内科や心臓血管外科と連携しながら高度な治療を行っています。

開業医の先生方や呉周辺あるいは広島の医療圏の病院の先生方からのご紹介、相談にも積極的に対応させていただいております。診断、処置、手術を行った後、状態が安定すれば紹介元に戻っていただけるように、病診および病病連携等の地域医療にも貢献しています。

 
 
診察、治療内容

【リウマチ関節外科】
関節リウマチとは、関節内や腱(すじ)の周囲に存在する滑膜組織が異常増殖して、関節破壊や腱断裂を起こす全身性の病気です。ここ数年、生物学的製剤の登場で病気の治療効果が格段に良くなりました。しかし、患者さんが全員良くなるわけではありません。現在の生物学的製剤を含めた薬物療法でも治療できない関節や腱に対しては、障害の原因となっている滑膜を手術で切除したり、破壊された関節に対して人工関節などの形成手術を、また断裂した腱には腱移植などの形成手術を行っています。当院では2011年4月1日から専門医の着任を期に本格稼動しています。外来は火曜日(午前)に濱田が担当しています。

(1)薬物療法
病気の治癒を目指し、早期診断・早期治療を心がけています。患者さん一人一人の治療目標をたて、治療を計画して、定期的に評価し、そのつど抗リウマチ薬や生物学的製剤などの調整を行います。こうすることにより治療効果が向上するという確証はすでに得られています。

(2)理学療法(リハビリ)
リウマチ患者さんの初期症状の一つとして「朝のこわばり」があります。これは、関節が長時間(寝ている間)動いていないために生じる症状で、リウマチ患者さんは、関節が硬くなりやすい状態にあります。硬い関節を通常に動かそうとすると、痛みが出ますし関節が傷害されます。これを防止するために温熱療法やリウマチ体操などのリハビリを薬物療法と併行して行う必要があります。

(3)手術療法
「膝関節外科診療」で述べている人工関節、関節鏡による滑膜切除の他に、関節固定術や腱移植などの腱形成術を行っています。いずれも目的は、日常生活動作の改善と生活の質の向上であり、患者さん一人一人の手術に対する利点欠点を考慮しながら適応を決めています。

 
【膝関節外科】
膝関節外科は火曜日に安本が担当しております。当科においては最小侵襲手術として内視鏡(関節鏡)による手術を中心に行っております。関節鏡とは膝を1cmずつ数カ所切るだけで関節内部の観察と処置ができるという、日本が世界に先駆けて開発した手術方法です。これにより従来の関節切開に比べ患者さんへの負担が小さくなり、術後の疼痛が軽減され、より早期に社会復帰が可能となっています。当科では関節鏡による手術は前十字靭帯損傷、半月板損傷といったスポーツ障害から、関節内遊離体(関節ねずみ)、膝関節滑膜炎などの変性疾患、脛骨高原骨折、後十字靭帯脛骨付着部骨折といった外傷まで幅広い疾患を可能な限り対象として行っております。
また高齢者に多い変形性膝関節症、大腿骨内顆骨壊死症などに対してはEBM(有効性の根拠がはっきりしている方法)に基づいた関節切開による人工膝関節置換術(関節の表面を人工物に代えてしまう手術)や高位脛骨骨切り術(骨を切って膝の傾きを変える手術)等を選択することにより、疼痛を除去するだけでなく患者さんのQOL(生活レベルの質)の向上も目指しております。
「膝の中で音がする、ひっかかりがある」「膝が外れそうな時がある」「歩き始めが痛い」「階段の下りが痛い」等の症状は膝関節内での軟骨、靭帯、半月板などの障害が考えられますので、ひどくなる前にお気軽にご相談いただければと思います。これまでに施行した約1000例の膝関節手術経験を生かし、症例毎に病態を把握し、患者さんと相談の上、最適な治療ができればと考えています。
尚当院は紹介型病院ですので、可能であればかかりつけ医の先生にお願いして病診連携室を通して外来予約して頂きますと、診療がスムーズとなりますので何卒宜しくお願い申し上げます。
<関節鏡による手術>
 
断裂した前十字靭帯   解剖学的な前十字靭帯再建術
 
半月板の断裂   半月板の部分切除術
 
正常より大きな半月板
(円板状半月板)
  正常に近づけた半月板切除術
<関節切開による手術>
 
人工膝関節置換術 術前   術後
 
高位脛骨骨切り術 術前   術後
(足の向きが変わっている)
 
【人工関節全置換術】
股関節、膝関節、肘関節などの関節軟骨が変性して骨の破壊が進行した末期の変形性関節症や特発性大腿骨頭壊死症、関節リウマチに対して人工関節全置換術を積極的に行っています。{人工股関節全置換術後のゆるみ}に対しても再置換術を行っています。股関節、膝関節とも人工関節置換術後、約1〜2日で歩行を開始し、3週間での退院が可能です。小皮切(7−8cm)による手術も行っていますので、希望される方は担当医にご相談下さい。

<輸血について>
(1) 股関節
輸血に伴う合併症予防のため、股関節では、通常手術前に自分の血液を採取し貯めておく術前貯血式自己血輸血と、術中に出血した血液を洗浄回収し輸血する術中回収式自己血輸血を併用しています。宗教上、同種血輸血や貯血式自己血輸血を拒否される方に対しても、全身状態をよく検査した上で、ご相談の上、可能な限り患者さんのご意向に添えるよう工夫させていただいております。

(2) 膝関節
当科では、本手術に対して全く輸血をせずに(同種血輸血や貯血式あるいは術後回収式輸血などすべてを含め)手術する画期的な方法を開発しました。この方法については、学会・論文でも報告し、患者さんから非常に好評を得ております。

 
【骨・軟部腫瘍外科】
平成23年10月より医師の移動に伴い、骨・軟部腫瘍外科を再度開設いたしました。当院整形外科の骨・軟部腫瘍外科で治療している腫瘍は四肢(手足)や脊椎(背骨)にできる腫瘍です。腫瘍は良性および悪性に大きく分類されますが、整形外科領域の腫瘍には良性腫瘍でも活動性の高い腫瘍(準悪性腫瘍とも言われています)があり幅広い形態を示しています。それぞれの疾患に対応した専門的な治療が必要で、特に手足にできる腫瘍の治療には術後の機能や日常生活動作を最大限に考慮しなければなりません。悪性腫瘍には肉腫と呼ばれる四肢に特異的な原発性腫瘍や、さまざまな内臓の癌腫(肺がん・乳がん・胃がん・前立腺がん・腎がん・肝臓がん・子宮がん・大腸がんなど)から骨・軟部に転移した腫瘍があります。正確な診断・予後予測を行い、患者さん個々の症状や病態、ご希望に合わせて四肢機能をできるだけ温存した治療方法を行った上で、腫瘍が完全に治癒できるよう様々な分野の専門医と共同で集学的な治療を行っています。当院は国立病院機構の中国地区がんセンターであり、常に最先端の診断および治療を提供することを使命と考え治療を行っています。平成23年10月から新たなスタッフで治療をスタートし半年程度ですが近隣の医療機関から約70名の患者さんをご紹介いただき治療を行っています(平成24年4月現在)。

<診断・治療に関して>
まず患者さんの生命予後を第一とした医療を行うことを目的としています。それと同時に四肢機能を温存した治療も、患者さんの将来を考えた上で重要と考えます。当科ではこの課題に対し、現在までに確立された診断・治療法を基本とした上で、最先端の医療を目指しています。

(1) 診断
MRIやCTなどの画像をもとに、生検を行い診断します。新しい分子生物学的手法を用いた診断もしくは治療方針の決定、予後予測を行う予定です。

(2) 新しい放射線治療システムを併用した患肢温存手術
四肢の機能を維持するために重要な血管や神経が腫瘍と接している場合、従来では手足を切断するしか方法がなかった症例でも、腫瘍切除後にヘリカルCT技術を応用した新しい放射線治療装置を用いて正確な放射線照射を行うことにより患肢を温存する方法です。当院に新たに導入された放射線治療装置を用い、放射線腫瘍科と共同し行う予定です。短期間にしかも集中的に狙った位置への高線量照射が可能になります。当該治療に関しては状況に応じた適応がありますので、ご相談ください。

(3) 遊離複合組織移植や人工関節などによる再建について
腫瘍を切除した後は大きな組織欠損を生じることがあります。再建方法にはさまざまな方法がありますが、自分の組織で再建する方が長期的な成績が良好な場合があります。当院の微小外科および再建外科と共同で血管柄付き組織移植などの再建を行っています。また人工関節センター発足により、人工関節での再建に対しても専門的なスタッフの対応が可能になりました。

(4) 化学療法
適応に応じて抗がん剤治療(化学療法)を行ないます。手足に原発する悪性腫瘍(肉腫)の抗がん剤治療を専門としたスタッフが行います。副作用対策を十分に考えた治療を心がけています。

(5) 手術後のリハビリテーション
患者さんが社会復帰された際の日常生活を考慮し、個々の状況に応じたリハビリテーションが必要と考えます。がんセンターとしての経験豊富なスタッフが治療を行います。

 
【手の外科・微小外科】
手の外科は、手〜肘など上肢を治療の対象とする専門分野です。1940年代にアメリカで創始され、日本では戦後広島大学・新潟大学その他の施設を中心に発展しました。
当科では広島大学整形外科教室の手の外科の技術を基本に、バーナード・オブライエン微小外科研究所(オーストラリア)や長庚紀念病院(台湾)の手術手技を合わせて治療を行っています。2009年度には約170名の患者さんが手の外科・あるいは微小外科による機能再建手術を受けられました。
対象とする疾患が非常に多岐にわたりますので、いくつかの領域に分けて解説します。

(1) 炎症性疾患
「指を曲げるとカクンと引っかかって戻らない、あるいは強い痛みがある。」ばね指(腱鞘炎)などがこれに含まれます。以前は手術でなければ根治できないなどと言われていましたが、最近は優れた薬剤が普及したおかげで、ほとんどの方が1−2回の注射で治癒するようになりました。残念ながら注射では治らず、手術が必要な方もおられますが、当科では1cm以下の小切開で手術(腱鞘切開)を行うようにしています。

(2) 神経疾患
「手のしびれが朝方強くなって目が覚める、指の力が入りにくくなった。」手根管症候群や肘部管症候群などと呼ばれますが、手の神経が圧迫されて発症する病気です。
初期の場合は適切な装具治療やブロック注射治療を行いますが、検査の結果非常に中等度以上〜重度の場合には手術が必要となります。
運動神経が麻痺していない場合の手根管症候群には手根管開放術が有効です。当科で行っているのは1.5cm〜3cm程度の非常に小さな切開を加える方法です。手は大変感覚が鋭敏な場所なので痛みが残りやすく、このように小さな切開で行うことにより術後の負担を軽減しています。

手根管症候群手術の皮膚切開
矢印の部分が手根管症候群手術の皮膚切開です。
この方は術後3カ月ですが、皮膚のしわと一体化してほとんど傷跡がわかりません。

また、非常に進行して運動神経が麻痺し、物がつまめなくなったり、握ることができなくなった方も再建手術によって機能を取り戻すことが可能です。手首を曲げるなど別の機能を持っている腱を移し替える腱移行という手術を行っています。
これらの病気は原因究明の検査が非常に重要ですので、必要に応じ脊椎外科医や神経内科医の協力の下、診断を行っています。

(3) 外傷、切断指肢再接着
怪我や事故による腱、筋肉、骨、血管、神経などの組織損傷に対する治療を行っています。手首や指などの骨の骨折や、腱の断裂では手術だけでなくリハビリが非常に重要な要素となります。当科ではできるだけ受傷前の機能が取り戻せるように専門のリハビリテーション技師が協力しながら治療にあたっています。

転落外傷によって手首を骨折した50代の男性の写真(術前術後)
転落外傷によって手首を骨折した50代の男性の写真。左が術前、右が術後です。
リハビリによりほぼ受傷前の機能を取り戻し、趣味や仕事に手を使うことができるようになりました。

また、切断されてしまった指・四肢の切断に対しても手術用顕微鏡を用いた再接合手術を行っています。成功率は怪我の状態や年齢などの要素に大きく左右されるため、残念ながらすべての患者さんが成功するわけではありませんが、指を短くせざるを得ない場合でもなるべく長く残したり、爪を残して指先を作る方法や、足から爪を移植して指先の形を温存する方法を行っています。

薬指を切断した1歳のお子さんの写真(術前術後)
薬指を切断した1歳のお子さんの写真です。神経だけでかろうじてつながっていますが、このままでは指が失われてしまうので血管吻合(再接着)手術を行いました。
右が術後の写真です。0.4mmの血管を縫合し、指を残すことができました。
 
指の先端部分を失ってしまった30代の女性の写真(術前術後)
左が術前で、右が術後です。指の先端部分を失ってしまった30代の女性の方ですが、爪移植と皮弁による組織移植を組み合わせて指の先端を形成しました。薬指(右側の指)と比較すると、指の長さが伸びていることがわかります。

(4) 変性疾患・変形性関節症
「最近手のひらに硬い固まりができて指が伸びなくなった」「若いころたくさん働いていたが、指先、親指の付け根や手首が痛くて生活に支障をきたしている」といった様な、年齢的な体の変化に伴って発症する病気(正確には病気というよりも体の変化ですが)です。
手のひらの塊は、デュプイトレン拘縮という病気です。進行するとやがて手の指が曲がりきって伸びなくなってしまい、手を十分に使うことができなくなります。塊を切除する必要がありますが、手のひらには重要な神経や血管が集中しているため、特殊な手術方法が必要です。

デュプイトレン拘縮の男性の手の写真(術前術後)
デュプイトレン拘縮の男性の手。左が術前です。薬指が伸ばせない状態ですが、術後(右)は伸ばせるようになりました。

手首や親指のつけ根、指の関節が変形してくるのは変形性関節症と呼ばれます。多くの方はご近所の整形外科の先生と相談され、温熱療法や痛み止めで治療することが有効ですが、中にはどうしても痛みが強くて日常生活に支障をきたす方がおられます。各種の関節形成術や、関節固定術、人工関節置換術といった手術の方法があり、これによって痛みを軽減することができます。

(5) 関節リウマチ
関節リウマチでは、様々な手の変化が生じます。手首や手指の関節変形、腱の断裂による指の運動障害などです。元の手に戻すことができるわけではありませんが、関節形成術や腱移行術、人工関節などの手術を組み合わせることにより機能を向上したり痛みを軽減することができます。当科では抗リウマチ薬や生物学的製剤も使用しながら手術の必要性を見定め、患者さんと相談の上で治療を進めています。

(6) 微小外科と組織移植
非常に大きな怪我や感染、腫瘍切除などによって体の大きな部分が失われた場合には組織移植が必要となります。体の別の部分から骨や神経、筋肉、指の一部などを取り外し、顕微鏡を使って神経や血管を縫い合わせ、必要な場所に移し替える手術です。
当科では血管柄付き筋肉移植・血管柄付き骨移植・遊離皮弁・神経血管付き皮弁という手術を行っていますが、これは脚から脚、足から手、前腕から手といった様に自分の体の中で行う一種の臓器移植です。平成20年度は5名の患者さんに行っています。

骨髄炎(骨の感染)により、第一指間(親指と人差し指の股)と骨を失ってしまった40代の女性の写真(術前)
骨髄炎(骨の感染)により、第一指間(親指と人差し指の股)と骨を失ってしまった40代の女性。親指が短縮した上に、開いて動かすことができなくなりました。
 
骨髄炎(骨の感染)により、第一指間(親指と人差し指の股)と骨を失ってしまった40代の女性の写真(術後)
骨・皮膚・脂肪などを含めた血管柄付き複合組織移植により、組織再建を行った後。
外観も改善しただけではなく、いろいろな仕事ができるようになりました。

(7) 先天異常
生まれついての手や足の形・機能に問題がある場合、手術により解決できることがあります。2歳頃から手足はたくさん使うようになりますので、体が大きくなった1歳以降から手術を計画します。
その他にも多くの手や肘の病気が治療の対象になります。ただし、手と思っていたら首が実は悪かったなどということも少なくありませんので、まずお近くの整形外科専門医によくご相談の上で手の外科外来を受診されることをお勧めいたします。

 
【脊椎外科】
脊椎外科は、濱崎(日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医)が、主に火曜日に担当しております。
せぼねの病気(脊椎疾患)には、せぼね自体(上位頚椎から腰仙椎まで)の病気と、その中を走る神経(脊髄・馬尾神経とそこからのびる末梢神経)の病気が混在しております。体の多くの範囲を占めるため、ひとたびせぼねの病気になりますと、症状の現れる範囲は広範囲におよび、なかにはせぼねの病気と気づきにくいこともあります。治療だけでなく、診断も難しい領域であると言えます。
呉市周辺医療圏の人口動態を反映し、加齢とともに増加する変性疾患(腰部脊柱管狭窄症、頚椎症性脊髄症など)をわずらわれる方も増加傾向で、当科へのニーズも大きなものとなってきております。「元気に年齢を重ねる」という多くの方の希望はわれわれ整形外科医に課せられた使命でもあり、「運動器の10年」というスローガンも相まって、保存的・手術的な治療によって、当科では患者さんの日常生活の質を少しでも向上できるよう積極的にお手伝いしたいと考えています。
有名フリーアナウンサーの発病・手術をきっかけに一躍認知度が上昇した「腰部脊柱管狭窄症」ですが、長時間立っていたり歩いたりができなくなること(間欠跛行)が愁訴の一つとなります。あの方は60歳前半で比較的お若く、立った姿勢での仕事がメインであるため、手術的加療が選択され早期に職場復帰(テレビ出演)されました。しかし同じ病態でも90歳の方で、歩くのはトイレと庭先程度、食事の準備も同居している方にしてもらう、という患者さんでは、合併症(心筋梗塞など)のリスクもあれば、手術は回避し保存的治療(内服薬、ブロック療法)が選択されるでしょう。
このように同じ疾患によっても、患者さんによって求めるニーズが変化してくるのがこの脊椎外科の領域です。そこで当科では限られた外来時間の中でも患者さんはもちろんご家族の希望を最大限把握し、最適となる治療法を提供することを信条としております。よって診察に時間がかかることに加え当院が紹介型病院でもあることから、近医かかりつけの先生にお願いして地域医療連携室を介した外来予約を入れて頂くと、診療がスムーズとなりますのでご協力を宜しくお願い致します。

<診察の流れ>
病歴・愁訴の経過(現病歴・既往歴)をお聴きした上で、神経学的所見など体そのものの診察をさせていただきます。画像診断(レントゲン、必要に応じてMRI、CT、造影検査〈脊髄腔造影、神経根造影、椎間板造影〉など)を行い、診断していきます。診断の過程で、他の診療科の受診が必要となる場合もあります。そうして把握できた病態、診断は、わかりやすい一般的な書籍(参考:別冊NHKきょうの健康 「腰痛、肩こり、手足のしびれ」など)も使用して、患者さんへの説明の補助とさせてもらっております。

<保存療法>
腕の痛みや脚の痛みが主な患者さんにはブロック療法が適応になることがあります。腰部脊柱管狭窄症・腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛、頚椎症・頚椎椎間板ヘルニアによる頚部神経根症が愁訴の患者さんには、腰部・頚部神経根ブロックを施行します。腰の神経で左右5-6対、頚の神経で左右8対、神経根が分岐しており、多くはそのうちの1〜2本が圧迫され、痛みに関与しています。透視室にて骨の形を目印に、透視では見えない神経根の場所を探しながら神経に直接針を指します。神経に到達した段階で刺激痛があり、場合によっては造影剤により神経の走行を確認の上(造影剤アレルギーのある方はあらかじめお伝え下さい)、痛み止めの薬(局所麻酔剤)と神経の腫れを抑える薬(ステロイド剤)を注入します。この注射でしばらくの間(数時間から患者さんによっては数週間)疼痛の軽快が得られる場合があります。痛みが軽快することで圧迫を受けている神経がどの神経であるのかという診断がつきますし、そのまま痛みが改善すれば治療に直結するという、診断と治療を兼ねた手技になります。透視室を使用するため、毎週金曜日の午後より予約を取って行っております。

神経根ブロック
神経根ブロック:透視室にてモニターを見ながら骨を目印に神経を探しているところ(左図)。神経に当たると造影剤を注入して神経の走行を確認(右図,神経根造影像)し,痛み止めのブロック注射を行います。

〈手術療法〉
患者さんの日常生活の質に直結する、脊髄症状(手指がもつれて箸が使いにくい、脚がもつれて転倒しやすいなど)や、馬尾症状(長時間立っていたり歩いたりができなくなる間欠跛行、排尿・排便機能障害など)が出現している患者さんにはできるだけ早く手術をお勧めしています。それらの症状は一般にお薬や注射などの保存療法で治らないためです。いたずらに保存療法を引き延ばしてしまいますと、障害が大きくなって手術をしても症状が残ってしまうこともあります。
当科での脊椎・脊髄手術には、ほぼ全例手術用顕微鏡(2008年より全国でも最新鋭のものを導入)を使用し、明るく拡大された立体的な術野で、精緻で繊細な操作による、侵襲の少ない(低侵襲)手術を心がけております。神経のすぐそばを操作しているということを常に念頭に置いた、顕微鏡下の慎重な操作を行っております。また可能な限り、不要な人工物(金属プレートやスクリューなど)はなるべく使用しない、合目的な手術をしたいと考えております。術後の痛みも少なく、長期間の安静臥床は不要で、手術翌日あるいは翌々日から装具を装着して歩行訓練を開始し、リハビリの進行も早いため、術後2週間程度での退院を目指しております。

手術用顕微鏡を使用した手術風景
手術用顕微鏡を使用した手術風景:二人の医師が顕微鏡にて立体的に拡大された視野を共有しています。直接介護する看護師は顕微鏡から映し出されるモニターによって術野を正確に把握し,積極的にアシストしています。

(1)頸椎
頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性脊髄症・神経根症、頚椎後縦靱帯骨化症などに対し、主に頚椎椎弓形成術(くびの後ろから進入し、頚椎の椎弓という部分を切り離し、切り離した椎弓には骨を移植して、筒状となっている脊柱管を拡大する手術)を行っています。

術前MRI   術中   術後MRI
術前MRI   術中   術後MRI

頚椎症性脊髄症:術前MRIでは第3頚椎から第6頚椎の間で、脊髄への圧迫を認めています。術中写真では(上が頭側)、頚椎椎弓形成術を施行し、拡大した椎弓が自分の骨(棘突起)で拡大が維持されている様子がわかります。術後MRIでは、脊髄に対する圧迫が解除されています。

(2)腰椎
腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎変性すべり症などの変性疾患に対して腰椎髄核摘出術、腰椎開窓術を行っています。腰椎の安定性に寄与すると言われる椎間関節をほとんど温存しつつ、馬尾神経・神経根の圧迫に関与しているヘルニアや黄色靭帯を摘出することで、神経に対する除圧を行っています。術後翌日あるいは2日目に歩行訓練を開始しています。

術前脊髄造影   術前MRI   術後MRI
術前脊髄造影   術前MRI   術後MRI

腰部脊柱管狭窄症:術前脊髄造影で造影剤が一部途絶しており、術前MRIで狭小化していた脊柱管が、術後MRIで圧迫が解除され、硬膜管が拡大しているのが確認できます。(頚椎でも言えますが、画像的には術前術後の変化が分かりづらいようにも見受けるのですが、術後の回復は良好です。神経に対する圧迫の解除は顕微鏡で視ても必要十分ですし、体にとって侵襲の少ない(低侵襲)手術だという証明になるものと思っています。)

(3)脊椎・脊髄腫瘍
せぼねや神経周辺にできた、比較的まれな疾患である脊椎・脊髄腫瘍(硬膜内髄外)にも手術的加療を行っています。明るく拡大された視野が腫瘍の安全な摘出に役立っております。

脊髄腫瘍(硬膜内髄外腫瘍)
脊髄腫瘍(硬膜内髄外腫瘍):硬膜を切開し腫瘍が、露出してきているところです。
 
脊髄腫瘍(硬膜内髄外腫瘍)
顕微鏡下に安全に腫瘍を摘出し、髪の毛より細いナイロン糸で硬膜を縫合したところです。この写真は顕微鏡下で拡大されていますが、縫合した長さは3cmにも及びません。

(4)その他
上記以外の病気で稀少な症例に対しましては、広島大学病院をはじめとする関連病院と連携をとりつつ、治療に取り組んでおります。

当科での最近2年間の脊椎・脊髄手術症例では、70歳以上の患者さんが55%で半数以上にものぼります。80歳以上の方でも21%で、90歳代で脊椎手術を受けられた患者さんもおられました。以前は、そして今でも地域によっては、せぼねの手術をすることで「歩けなくなる」、「不随になる」ということで躊躇(ちゅうちょ)される患者さんもいらっしゃいます。しかし麻酔科をはじめとする他科との連携に加え、顕微鏡を使用した患者さんに優しくより安全な手術と、術後の手厚いリハビリによって、手術の結果、術後の成績は格段に改善しています。認知症などはないのに神経症状の悪化によって、手先が不自由になったり、歩くのがおぼつかなくなって出不精になったりして、日常生活が制限されていくことは、広島弁で言う「はがええ(くやしい、むかつく、情けない、などの意)」というお気持ちになられるようです。一旦は手術を躊躇された方も、「元気に年齢を重ねたい」という強いご希望のもと、当科に受診されてみてはいかがでしょうか?

 
 
治療診療実績
  2009年 2010年 2011年
入院患者数(人) 885 920 845
手術件数 823 899 896
人工関節 88 104 77
 ├ THA 30 21 18
 └ TKA 58 83 59
脊椎手術 108 86 102
 ├ 頸椎 29 25 33
 └ 腰椎 76 60 65
手の外科 - - -
 ├ 外傷 71 79 115
 └ その他 53 77 59
大腿骨頚部骨折 155 156 167
 
 
学会認定
日本整形外科学会臨床研修施設
日本リハビリテーション医学会研修施設
 
 
スタッフ紹介
氏名 職名・免許取得 専門医、認定医等 得意とする分野 PHOTO
スギタ タカシ
杉田 孝
副院長
医学博士
昭和52年
国際患肢温存学会 Active Member
日本整形外科学会整形外科専門医
日本整形外科学会認定リウマチ医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本体育協会公認スポーツドクター
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
臨床修練指導医

骨・軟部腫瘍

ハマダ ノリカズ
濱田 宜和
整形外科科長
医学博士
昭和55年
日本整形外科学会専門医
日本リウマチ学会専門医
日本運動器リハビリ学会専門医
リウマチ関節外科
ヤスモト マサノリ 
安本 正徳
医長
呉人工関節センター長
医学博士
平成3年
国際関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 Active Member
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本整形外科学会認定運動リハビリテーション医
日本整形外科学会認定リウマチ医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
膝関節外科
マツオ トシヒロ 
松尾 俊宏
医師
医学博士
平成5年
日本整形外科学会専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
骨・軟部腫瘍外科
化学療法
 
ハチスカ ヒロキ
蜂須賀 裕己
医師
医学博士
平成8年
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本整形外科学会脊椎脊髄病医
手の外科
微小外科
 
ハマサキ タカヒコ
濱ア 貴彦
医師
医学博士
平成10年
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
脊椎外科
イズタ ヤスノリ
泉田 泰典
医師
医学博士
平成11年
日本整形外科学会専門医 膝関節外科  
ニイタニ マナブ
仁井谷 学
医師
平成13年
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定運動リハビリテーション医
整形外科一般
関節外科
 
ヨシカワ マサヒロ
好川 真弘
医師
平成21年
     
 
外来診療日割表
午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後
リウマチ
    濱田              
脊椎外科
    濱崎       濱崎      
手の外科
    蜂須賀     蜂須賀        
膝関節外科、関節外科 (火曜午後は初診の紹介患者さんのみ)
    安本 安本 仁井谷 仁井谷     泉田  
骨・軟部腫瘍外科
松尾 松尾       杉田     松尾  
整形外科一般、特殊外来
初診   初診   初診   初診   初診  
                好川  
 
★ 医療の役割分担として、当院は高度医療・急性期医療を担っており、地域医療機関との連携を主眼において医療を行っております。本趣旨をご理解のうえ、『当院受診の際にはかかりつけ医からの紹介状のご持参』『当院での高度及び急性期医療が終了した段階での地域の先生方へのご紹介』へのご協力をお願いいたします。
セカンドオピニオンを完全予約制でおこなっております。ご希望の場合は事前に地域医療連携室までご連絡ください。
※休診の場合がございますのでこちらでご確認ください。
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